Dan Warne (APC): Firefox の検索バーで稼いでいるお金についてお尋ねします。というのも、Google が自社の検索機能のために資金を提供しているのはかなり広く知られていますが、どのくらいの金額を Google が支払っているかについてはほとんど知っている人がいません。

Mitchell Baker: まず、2 つの点を指摘しておきたいと思います。それは、Google だけではないということです。彼らだけではないのです。これは、私たちが開拓したことのひとつです。まぁ、皆さんは Google のことを考えるでしょう。検索バーやスタートページでは彼らが標準ですし。しかし、私たちが始めたことのひとつは、ユーザに複数の選択肢を提供するということです。

見てみると分かりますが、Google があり、Yahoo! がすぐその隣にあります。今では皆さんがそれを当たり前だと思っているかもしれませんが、当時私たちが交渉を始めた時には当たり前のことではありませんでした。Google が標準になっていますが、選択肢を確保するという点、ユーザが関心を持つだろうと思われる他の検索エンジンを標準に加えてリリースするかも知れない点、ユーザは何でも追加できるという点について、譲るつもりはありません。

検索エンジンを追加するのはとても簡単なことなんですよ。ユーザの選択肢という観点からは非常に基本的なことでした。そういうわけで Google 以外とも契約を結んでいます。私たちは非営利なので、私たちをめぐる数字は監査されていますし、記録は公開されています。まだ 2006 年度の届け出が済んでいませんが、2005 年度の数字はおよそ 5500 万ドルです。

Dan Warne (APC): ワオ! 凄い金額ですね。1 年に 5500 万ドルあれば非常に多くのことができると思いますが。

Mitchell Baker: そうね。私たちのようなオープンソースプロジェクトではかつてないことですね。もちろん、会社に振り込まれる金額は税の対象になっていますから、すべてを手にできるわけではありません。が、いずれにしても、かつては考えもしませんでしたし、非常に嬉しいことで、しかも、多くのことができるようになりました。ブラウザはインターネットにとって欠かすことのできないものなので、とても大切なことです。

かつては限られた予算の中で何とかしようとしていましたし、1.0 までは非常にうまくいっていました。機会が広がり、これまでのように少ない予算でやりくりしても通用しなくなったので、とても助かっています。特に、ユーザがそれを気に入ってくれていますし、検索は役に立ちますので。ブラウザのインタフェースにあるボタンを売り払らえば、お金を手にできるかもしれませんが、ユーザにとっては役に立ちませんから。

もしかすると、ユーザが気に入ってくれるような別のものを考え付くかもしれませんし、それは素晴らしいことです。が、今の時点では、現在のブラウザからも収益を生み出す大きな機会に恵まれています。

従来のビジネスプロセスでは、収入源を多様化させるようにと言われます。これは、理想的にはそうですが、製品を犠牲にしてまではできません。

Dan Warne (APC): そうですね。過去のインターネットアプリケーションの多くが、一線を超えてしまい、余計な追加機能でユーザを困らせてきました。

Mitchell Baker: ええ、ですから、私たちは、皆さんに Firefox を本当に気に入ってもらえるような道に辿り着いたというか、そこを出発点にしたのです。そして、どれほど皆さんがソフトウェアを気に入ってくれているか、とか、どれだけワクワクしているか、とか、それを使ってみて、ビルドしてみて、そして作成してみるにあたって、どれだけ皆さんが他の人たちを手伝うのかを説明するなんて、ちょっとおかしなことだと思ったりもします。でも、実際に起こっていることなんです (笑)。

で、ユーザの規模が大きくなっていくのを目の当たりにし、興奮の度合いも目の当たりにしました。そして、Firefox にまつわる、もうひとつ別のあまりにも頻繁に使われている「情熱」という言葉が、私たちのコアの開発コミュニティを超えて、信じられないほどの数の人々に伝わっていきました。これは、かけがえのない資産です。そして、Firefox は素晴らしいブラウザだ、これまでのものより優れている、といった信頼感が出てきました。そして、私もそれに意を同じくします。

しかし、Firefox を考えるにあたって、それこそがもっとも根本的なものなのです。背景には、製品が素晴らしいということもありますし、私たちが公益団体で、自分たちの利益を最大化しようととしているわけではないし、限られた人々のための個人的な富を大量に生み出そうとしているわけでもないことを知っている人たちの存在もあります。資産は、公共によって所有されているのです。

多くの人は、オープンソースの質や、それがどのようにして成り立っているのかについて知りませんが、実際には、製品から、最終的な成果物がどのようにしてできあがったのか、そして、コミュニティベースでユーザを中心に考えて作成されたのかが、何となく感じられるのではないかと思います。

Dan Warne (APC): Firefox の魅力のひとつに、アドオンによるエコシステムが挙げられると思います。Microsoft がこれを再現しようとして必死になっているのを見ているとおかしさも感じます。しかも、彼らのエコシステムでは、「これは 30 ドル」とか「これは 50 ドル」といったもので溢れています。すべてがコマーシャルウェアで、Mozilla のオープンソースモデルでは、実際にソースをオープンにしない限り、このエコシステムの再現は困難であるとの証になっているのではないかと思います。

Mitchell Baker: そうですね。まず第一に、株主の個人的な富とは逆の公共資産への関心を再現すること自体が困難です。というのも、根本的にこれらふたつは異なる団体で、それぞれが異なる方向性を持つ法的な拘束を受けています。ですから、定義的にも再現できないのではないでしょうか。

私たちが活動している、中央での強固な統制と品質管理で支えられた非中央集権的なボランティア活動という枠組みも、かなり再現の難しい設定です。もちろん Microsoft は、様々な共有リソースや、コラボレーションまたは共有のためのイニシアチブを持っていますし、良いことです。確かに、一歩前進という感じかもしれませんが、雇用関係や経済的な構造ではなく、リーダーシップによる組織構造を通じて行うことを共有するのとは根本的に異なります。

ですから、再現は難しいでしょうし、実際に Firefox で作業すること、テクノロジーの品質、そのテクノロジーで作業する能力、そして Firefox を使う上での問題を解決できる面白いこと、といったことは誰にも真似できません。再現はとんでもなく難しいですね。